デルタ航空による合併努力、エールフランスが役割果たす可能性も

デルタ航空による合併努力、エールフランスが役割果たす可能性も

　ニューヨーク（ウォール・ストリート・ジャーナル）米デルタ航空（NYSE：DAL）は、世界最大の旅客航空会社を形成するため、ノースウエスト航空（NYSE：NWA）、UAL(Nasdaq:UAUA)傘下のユナイテッド航空の両社と合併交渉を進めているが、その要となりそうなのは、数千マイル離れたパリにあるエールフランスKLM(NYSE:AKH) だ。

　エールフランスは「スカイチーム」のメンバーとして、デルタ、ノースウエストとすでに提携関係にある。デルタがノースウエスト買収を目指す場合、エールフランスは戦略的あるいは財務的な支援を提供できる可能性がある。交渉に詳しい筋によると、デルタが優先する合併相手候補にはノースウエストがなる可能性が最も高いという。

　デルタのリチャード・アンダーソン最高経営責任者（CEO）は、11日の取締役会の後、パリに飛んだという。この取締役会では、同CEOがノースウエストとユナイテッドとの合併交渉を正式に始めることが承認された。

　アンダーソンCEOがパリ滞在中、合併シナリオについてエールフランス関係者と話し合ったかどうかについて、デルタとエールフランスの広報はいずれもコメントを避けた。

　交渉について詳しい筋によると、デルタが検討している取引は、現在の株価近辺を中心とした株式スワップという。燃料価格の急騰や景気をめぐる懸念を背景に、航空会社の株価は世界的に低迷しているものの、欧州航空会社は、米国の同業よりは業績が好調で財務状態がよい。

　エールフランスは、合併で誕生する新会社の株式を相当数取得することと引き換えに、米航空会社が不足している現金を提供できる可能性がある。そうなれば、条件はかなり有利になり、他社がそれを上回る条件を提示することは難しくなる、と同筋は言う。

　米連邦法は、米国航空会社の議決権株式を外国人投資家が25％超保有することを禁じている。それでもエールフランスの考え方に詳しい筋によると、合併で誕生する航空会社の株式を少数でも取得できれば、米国へのより大きなアクセスが与えられる可能性があるという。

　一見すると、デルタが業界再編を目指しているのは、米国内航空業界を圧迫する要因に対する率直な対応にみえる。ここ数カ月、乗客量は記録的な水準にあるものの、原油価格の高騰や景気の減速が、５年におよぶ航空不況からの復活に黄色信号をともしている。

　しかし、航空会社が持続可能な価値を築き上げるうえで同様に重要なのは、国際サービスだ。デルタは、破産裁判所の保護下で再建を進めていた時、問題を抱えていた国内路線の多くを縮小し、これら路線の航空機をより収益性の高い国際線に振り向けた。国際線は、同社成長の最も重要なけん引役となっている。

　一方、米国航空会社にとっては、海外航空会社はより大きな競争上の脅威となっている。米国と欧州間の航空路線自由化（オープンスカイ）協定は３月下旬に発効する予定で、エールフランス、英ブリティッシュ・エアウェイズ(BAIRY)、ルフトハンザ航空(DLAKY)などの欧州大手に、米国の空港への就航でより大きな柔軟性が与えられる。

　またアジアや中東の航空大手も、米国、欧州、急成長する新興国市場の間の航空市場でより大きなシェアを得るようになっている。

　デルタによる合併で、エールフランスが重要な役割を果たすうえで障害もある。

　エールフランスは、不振のアリタリアの株式をイタリア政府から取得しようとしているが、この交渉は難航する見込み。エールフランスがアリタリアの経営権を握った場合、同社を立て直すにはかなりの財源と経営陣の時間を要するとみられる。

　デルタがノースウエストではなく、ユナイテッドとの合併を選択し、スカイチームから離脱した場合、それはエールフランスにとって二重の打撃となる。米国の主要パートナーを失うことに加え、ルフトハンザの米国パートナーを後押しすることでルフトハンザへの追い風となるためだ。

　（１月17日付のHeard On The Streetより）

日本経済新聞 - 2008年1月17日



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